想うコトすまうとのこだわり
すまうとがお届けしたい
天然素材のある暮らし
1. 天然素材を使うわけ
アレルギーという問題
21世紀に人類はアレルギーとの戦いの世紀になるだろうといわれたりしています。
これは大気汚染や食品添加物、農薬、有機溶剤など、人工的な化学物質に起因するものも大きく影響しています。特に目に見えない空気の中に溶け込む人工的化学物質によって起こる化学物質過敏症やシックハウス症候群といったものは防ぐことも対処することも難しい大変な問題です。
こういった問題をなんとか見直したいと考え、“天然素材”にこだわったモノづくりをしようと思うようになりました。
天然素材にこだわるとは
「天然素材にこだわる」といっても、現代的なものを取り払い「昔の生活」に戻る、という考えは現実的ではありません。私たちは天然素材を、生産性や利便性を兼ね備えた“現代的な使い方”ができるようにして使っていこうと考えています。
天然素材のチカラ
現代だからこそ天然素材
天然素材には元々素晴らしい性能が備わっている場合が沢山あります。軽さ、強度、調湿効果、抗菌効果、香り成分によるリラックス効果、防虫効果等など、人々は昔からつい最近までこれら自然のチカラを生活の中に生かし上手く利用してきました。もっと便利に、もっと簡単に、もっと効率的に、もっと安く、もっと格好よく(もっと、もっと、もっと)という考えの中、健康や環境、そして触り心地や経年変化(アジ)のような五感で感じるここち良さという部分が少々ないがしろにされてきてしまったのかなと思います。その弊害が出てきているということだと思います。
これは科学の進歩が害をもたらしてきたのですが、更に科学や工学が進歩進化する中で実は扱いが大変だと思っていた天然素材が(価格も手間も)扱いやすくとても身近になってきていることがたくさんあることに気がついたのです。でんぷんはアルファー化し乾燥させることができるようになり、さらに粉をとても細かく微粉末化ができるようになったので水で簡単にでんぷんのりが出来るようになりました。フレッシュな天然の糊がいつでも簡単にできるようになったという事になります。木材の乾燥は自然界にある温度帯(低温)で乾燥できる技術ができました。また化学物質が発生しない無機素材(陶器、石、金属)も進歩しとても使いやすくなっています。ガラスを液体化し塗料として使えるようになりました。(ガラスはカラダに吸収されたり溶けだしたりしないので昔から安心な素材として使われています。)錆びないステンレスが気軽に使えるようになりました。強化ガラスも気軽に使えるようになりました。
現代だからこそ天然素材や無機素材が使えるのかもしれない、使いたいと思ったのです。
2. 接着剤も塗料も自然素材
家具が化学物質の発生元となる可能性も
シックハウス症候群は家屋の建材だけでなく、家具が原因となることもあります。どんなに VOC(揮発性有機化合物)の指針に従った家づくりをしても、その家に置く家具が化学物質の発生元となるかもしれません。一見木製で天然素材の家具のように見えても、そのほとんどは塗料や接着剤で化学性のものが使われています。化学塗料を使用した家具は、手で触れる部分はすべてプラスチックの触り心地なのです。ほとんどの木製家具はこの状況です。これで果たして本当に “天然素材の家具”と言えるのでしょうか。これらのことからすまうとでは、接着剤や塗料を極力使わないでよい工法を開発したり、使うとしても自然素材のみを選んで使用しています。
無塗装という選択はありか?
全てのものを塗装するという考え方にちょっと待ったをかけたいと思っています。塗装をしないという選択肢がある事を皆さんにお伝えしたいです。特にスギやヒノキのような針葉樹、桐などは無塗装の状態が最も良い性能を発揮してくれるからです。冬でもヒヤッとせず温かく、汗ばんだ肌でもべとつかずサラッとしていて、肌ざわりが優しいという塗装しないほうが良いと思われる素材もあるのです。
しかし塗料は汚れの保護やツヤやキレイな色合いを出して高級感を感じさせてくれたりする優れものでもあります。当社では養蜂場から直接仕入れた蜜蝋と薬品ではなく圧搾した亜麻仁油や菜種油を混ぜて天然の塗料をつくっています。木材に触れた時に木そのものの質感が感じられる仕上げと考えています。
自然素材の接着剤は強い?
すまうとで使用する接着剤はたんぱく糊とでんぷん糊です。
たんぱく糊は、乳に入っているたんぱくを取り出したものです。でんぷん糊はお米などを由来とした糊です。
自然素材の接着剤というと、強度を心配される方もいるかもしれません。強度の測り方はいろいろありますが、たとえば接着強度を調べる1つとしての“せん断試験”では、でんぷん糊は木工用接着剤と同等、たんぱく糊はそれ以上の強度が出るという結果が出ています。[第三者機関にて試験済]
また、自然素材の接着剤には”劣化が少ない”と感じていますが、”衝撃に弱い”というデメリットも感じています。しかし、こうしたデメリットについては、接着面積を2倍にする、クサビを入れる等、弱い部分を構造的に補っていけば問題はありません。エンジニアとして、こういった部分を補いながら、天然素材にしかない良さを家具に生かせたらと考えています。
3.スギのススメ~性能にほれ込んだ話~
スギの特徴をご紹介
【軽さ】
スギは他の木と比べて軽いため、強度が低いと言われることがありますが、実際は建築の柱に使われている材でもあり、ある条件下での強度は鉄をも凌ぐことがわかっています。
【吸湿放湿性能】
湿気を吸ったり吐いたりする性能が非常に強いです。梅雨のある日本ではありがたい材料です。
【柔らかさ】
触れると柔らかく優しく、空気を含んでいるため冬でもヒヤッとせず暖かい
【香り成分】
安眠を促したり、勉強をする際などストレスがかかっている際に鎮静効果があるという研究結果が出ています。
これらのことから、スギはほかの木と比べても、椅子のような肌に触れる家具やリラックスして安眠するためのベッドにとても合う素材と言えます。少し前では考えられないことでしたが、今ではその良さが認められフローリングにも使われるようになり、少しずつスギの見られ方が変わってきていると実感しています。
しかしながら、その軽さ故の強度の心配や、柔らかいからこその傷つきやすさから、まだまだ家具としては使われていないのが現状です。一般の家具屋さんでは扱いづらいスギを、すまうとではメリットを最大限に生かすために、デメリット部分をうまく構造工学などで補い適材適所で使ってあげることで、そのよさを生かした家具づくりをしています。
4.姿勢と座り心地
椅子に座る姿勢
“いい姿勢”というと“頑張って座る緊張感のある辛い姿勢”をイメージするかもしれませんが、本来、いい姿勢というのは気合いを入れて頑張ってとるものではなく、骨盤が立ちやすい仕組みによって自然と促されるのが理想だと考えています。実は自身に腰痛があり、何度もぎっくり腰を経験する中で、その原因が家具にあることも多いのではないかと思うようになりました。
そもそも椅子というのは西洋からきた道具です。大きさも骨格も筋力の付き方も違う日本人に、そのままの形で合うわけがありませんが、西洋人の体に合う形で輸入され、そのまま日本で作られるようになったため、日本人の体に合わないものが当たり前のように使われてきました。
日本人に合った座り姿勢について
以前座禅をしに行った際、僧侶が座布団をお尻の下に入れていたのを見て、僧侶の美しい姿勢は修行の中だけで得たものではないかもしれないと考え、座布団の代わりになる仕組を椅子に取り入れ、骨盤をぐっとあげることのできる椅子を作りました。他にも整形外科の先生や、人間工学の先生と一緒に椅子づくりをする機会を持つ中で、姿勢と椅子の関係に興味を持ち、“天然素材”というだけでなく、椅子によって“姿勢を促す形(仕組)”の部分でも健康と結びつく家具の提供ができるのではと考えるようになりました。
すまうとでは、その方の骨格に合わせて椅子をつくったり、椅子を調整(フィッティング)する事で腰痛や肩こりを起こしにくいとされる骨盤が立った姿勢(座禅を組む僧侶のような上半身の姿勢)を促す椅子をつくっています。[チェアーフィッティング]
5.山から関わる家具づくり
低温で乾燥するということ
一般の流通ではない素材を使用
スギやヒノキといった針葉樹は、家具にはなかなか使われないため、流通している材のほとんどは建築用の材です。建築用の材は家具用の材よりも含水率が高く、空調が効いている室内では家具が割れる可能性があるため適しません。建築用の材の含水率は20%から多いときは30%程度ですが、家具に使おうと思うと10%程度まで乾かす必要があります。
そこですまうとでは、山から関わって、通常流通では仕入れることが出来ない素材を林業者とタッグを組み自分達で作ることにしました。昔からのやり方で、冬の新月間近のタイミングで伐採し、葉枯らし乾燥という方法をとった材を林業者に頼んで管理してもらい、自社で自然乾燥後低温乾燥をさせています。低温乾燥は、一般的な人工乾燥よりも低い40℃台程度で乾燥を行う方法です。地球にある温度帯で乾きやすい条件を作ってあげるだけで、負荷を与えずゆっくり乾燥させていきます。高温での乾燥と違い、木の中の成分が変性することもありません。昔ながらのやり方だと他に天然乾燥という方法もありますが、これは気候の範囲内までしか含水率が落ちません。昔はそれでも十分でしたが、今は家の中の気密性が増し空調もされており、室内は室外よりも乾燥状態にあるため、家具に使用する際には天然乾燥の材よりも含水率を絞ることが望ましいのです。
これらの取り組みをお客様にも知っていただくため、すまうとでは立っている木からお客様にも関わっていただく「タチキカラ」というプロジェクトも行っています。
新月伐採(月齢伐採)という方法
これは木や植物が月の引力に影響を受けていることからくるもので、新月に向かっているときは木が休んでいる状態で木の内部には栄養や水が少ない状態となります。満月に向かっているときは成長期にあたり木の中に栄養や水が蓄えられている状態になります。新月の直前に伐採を行うことで、虫やカビがつきにくく、乾燥もしやすい材になるという考え方なのです。海外でも楽器の世界では、今日でも行われていることがあります。昔の日本でも行われていました。
6.住まう人のために、家具・建具・建築の境界を超えたい
よりよい暮らしのために
これまでの建築屋さんと家具屋さんの関係は、「建築屋さんが家のつくりが決まってから、図面ができてから家具屋さんに作らせる」受発注の関係しかありませんでした。暮らしのために家があって、空間があって、家具があって…でもそれをはじめから一緒に、よりよい暮らしのために家具も考えるような流れがどうしても足りないような気がしています。建具なのか、家具なのか。たとえば家具で空間を作ってもいいし、建具の中に家具がはまっていてもいい。本来そこに境界は必要ありません。家具、建具、建築全体を総合的に捉えていきたいと考えています。
有用で現代的な住まいを提供
今、リフォームが一つの産業として膨らんでいますが、いざリフォームをしようとするとあちこちに手を加える必要が出てきて大がかりになることがよくあります。そんな中子育てや子離れといったライフプランの変化があった際に、本当はリフォームをしたいけどコスト的にできないという人はすごく多いのではないでしょうか。そんな時に、家具と建築がもっと融合していれば、たとえば初めから大きな空間に家具で壁を作っておけば何回でも組み替えることができる…そんな有用で現代的な住まいが提供できるようになるのでは、と考えています。これはすまうとの“夢”として何かの形で提供・提案してゆきたいです。
7.構造工学が家具に生きる小話
構造工学の視点で考える
私はデザイナーであり木工職人であると同時に構造エンジニアでもあります。構造とか工学とか力学というと、硬くて答えが一つしかないもののように感じるかもしれませんが、実は視点を変えれば幾通りもの答えを導き出すことができます。答えは1つではなく無数です。創造性が高く柔軟でクリエイティブなものなのです。その反面、解が絶対的な1つのものでない事になりますのでコンセプトや条件をしっかりと組みたてなければいけません。
例えば”椅子”は、美しさやここち良く座るための機能が必要ですが、安全に座れるための強度なくしては椅子として成り立ちません。強度を出すためには構造をしっかり考えてつくらないといけないというわけです。そして構造をどう処理できるかで形や機能の選択肢の幅が大きく変わってくるのです。
構造力学の世界と家具の融合
天然素材で作るため接着剤を使わなくてもいい工法を考えたい!肌に優しいスギを使いながらも、強度も兼ね備えた工法を探したい!これらも、まさに構造工学でこそ解決ができると思うのです。構造工学の世界と家具は、かなりいい関係なのでは、と思っています。
8.研究アレコレ
研究所でもありたい
エンジニアなので、感覚的な仕事ではなく根拠をもって仕事をしたい、研究所でありたいと常々思っています。
〜実験や研究の例〜
①低温乾燥スギの性能(発表済)
②スギと広葉樹の家具 特許有り
③椅子と姿勢 日本の座りの技を椅子に
④天然接着剤の強度試験
~今後の課題や着目している素材・事など~
①セルロースナノファイバー
②「漆」という接着材
③姿勢とこころや身体の反応